第7章 決断
何で?
何で私 何も言えないの?
情けなさに俯くと、さらさらと紅い髪がすべった。
―――バージル…
すぐ隣にいる彼を、顔を動かさずに見る。
その表情はぴくりとも動かない。僅かに鍔を押し上げた手も。
何もしゃべらない。
いっそどちらかが無理矢理私を連れて行ってくれないだろうか。
そう思ったが、それは私の弱さゆえで。
優柔不断。
どちらも選べない。
自信を持ってついていけない。
ヒュウイについていってもバージルについていっても、不安や後悔が残る気がして。
何で?
こんなに悩むのはなんでなの?
私の性格?
ヒュウイ様と約束したから?
バージルが好きだから?
ヒュウイ様が好きだから?
どちらが私の居場所なのかわからないから?
どちらかを選ばないと、私には居場所は―――
次第に冷えて行く心。
懐かしい。暗殺をする時と同じ。
相手に感情移入をしない為に、仕事の前にはよく心を殺す時間が必要だった。
初めは感情を押さえ込むのに何日もかかっていたけれど、段々その時間は短くなり、しまいには数分あれば私は私の心を殺せるようになってしまった。
目に入ったのは、自分の紅い髪。
―――あぁ、…わかった。
は微笑んだ。
周りのノイズが急速に薄れていった。
かわりに巡り始めたのは、血の記憶。
―――私の過去がいけないんだ。
人を殺した過去だから。
だから二人を傷つけるかもしれなくて。
一緒にいられなくなるかもしれなくて。
今はよくても、いつか離れるだろう。
私はこんな人間だから。
一緒にいたくなくなるに決まってる。
本当に怖いのは私自身。
過去がなければ、私は人を好きになれて、一緒に暮らせたのかもしれない。
そんな過去の上に立っているなら、私は―――