第7章 決断
は髪をつかんだ。
紅い髪。血の髪。
私の過去があるから。
私がいるから。
「……?」
バージルがの様子を見て不審がる。
一体何をするつもりだ?何を探している。
「おい、…」
その声には応えず、の右手が無意識に腰をまさぐった。
いつも隠しているナイフ。
手に触れて、その存在を確かめる。
「私…」
ふと声を出した途端、あれほど静まっていた恐怖が再びを襲った。
何がいけないのか理解し、安堵したが発した声は、昔冷たく制裁を下した声。
記憶がめぐる。
「さよなら」、とそう言って振り下ろされる刃。
流れる紅。
他人事のように記憶を駆け巡るのは、血塗れた刃を持った自分の姿ばかり。
「ぅ…あ…」
嫌だ。
見せないで。
怖い。
やめて。
「…?」
俯いて震えるに不安に思ったのか、声をそっとかけるバージル。
は苦しそうな顔をしていて
それを見た自分も心苦しくて。
しかし手出しはできない。無理矢理連れて行こうかと何度も思ったが、これはの問題だ。
自分にはどうする事もできない。
いくら声をかけてもには聞こえていないようだった。
長い髪が表情を隠している。それが更にバージルの不安をあおる。
ふと、の右手が不自然な動きをしているのに気付いた。
―――何か…持ってるのか?
何を、と確認しようとしてそれを見た瞬間、一気に身体が冷えるのを感じた。