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【DMC】BLUE

第7章 決断


今まで寒い日には必ずバージルが暖房を入れていた。
が起きて階段を下りると、必ず部屋は温まっていた。そんな彼が暖房を付けてないなんて。

今まで気づかなかった、ささやかな気遣い。そして今日暖房を付け忘れた理由は、何となくわかる気がした。

雪、という単語で思い至ったのか。バージルが暖房のスイッチを入れる。
うなりだした暖房は、すぐに暖かい風をよこした。


水音と、食器の重なる音と、包丁の音。
いつもと何ら変わりない。
昨日の事が嘘のように普通。
は何も考えず、ただこの時間を全身で感じ取るように、目を閉じて膝を抱えた。

掃除された部屋。
整えられた雑誌。
朝起きると、必ずある新聞。
必ず見る姿。

部屋の観葉植物の土は乾いたことが一度もなくて
枯れたところも見た事がなくて。
食器が洗われていないままのところも見たことがなくて
靴が散らばっているところも見たことがなくて。

「………」

はぎゅっと自分を抱き締めた。


なぜか今日は、いろんなものが目につく。
どれも毎日の中の普通な日常。

私は最低だ。
こんな優しさにも気付かないなんて。
当たり前の日常だと思ってたなんて。
今更それに、気付くなんて。

だから バージルには最後まで会いたくなかったのに。
バージルは優しいから
私は汚いから
汚さは綺麗に憧れる。

は唇を噛み締めた。


それから二人は会話もせず、まるでそれが当然のように話しかけもせず、朝食を口にした。
食器の音だけが響く。
互いの些細な音だけが響く空間を守るように、テレビもつけず。

二人とも、考え事のせいで目は合わせない。
ただ食べる事だけを目的に手が動き、無感動に食事を進めた。
味なんてわからなかった。
美味いか不味いかさえも。

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