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【DMC】BLUE

第6章 過去



「ヒュウイ様に見つけられたのは偶然だった。殺しの帰りに出会って、血の髪が気に入ったと言って、私はヒュウイ様に買われた。そして一生の生活の保証と共に、一生のヒュウイ様の護衛を命じられて…」

その時のヒュウイの瞳は今でも忘れない。
とっておきのおもちゃを見つけたような、無邪気に嬉しそうでいて、歪んだ皮肉な笑顔。

「私はずっと殺しをしてきたから、護る事を優先される護衛の仕事にすぐには慣れなかった。一生懸命慣れようと努力して訓練したけど全然駄目で、近付く者全てが、ヒュウイ様でさえ敵に思えて仕方なくて。
そしてその不慣れな中突然気付いたんだ。私は一生、誰かを護る護衛なんて仕事、できないんだって」

の顔が苦しそうに歪んだ。

「今までずっと人を傷つけてきたのに、急に人を護るなんて事できなかった。身体がもう、殺しの道具になってるのよ。
気持ちなんか関係ない。勝手に手が動いて、気配を勝手に殺して、幾度も人を殺しそうになって。殺して」

それに気付いた時の絶望感は、かつて仲間を殺した時のそれの比ではなかった。
傷つけるだけの、ただ傷つけるだけの存在。脳のない兵器と変わらないじゃないか。

生きている事の意味とは何か。人を殺す為に生きているのではないとわかっているのに、幼少から叩き込まれた術は身体に染み付いて離れない。


「駄目なんだ私には。もうどんなに努力したって、人は護れない。正直人を殺さなくていいって事に安心してたけど、身体が言う事をきかない。無意識に殺す手順を考えている。私は、私が、恐い」

俯いた表情はバージルからは窺い知れない。これでは化け物だ、と呟いた声はかすれていた。
瞳からは涙が落ちて、テーブルに小さな水溜まりを作った。

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