第6章 過去
「両親が貧しくて、私は産まれてすぐ暗殺部隊に売られたの。そこで毎日毎日、殺しの練習をして…毎日、殺した」
自分の手を見つめる。
血塗られた手を。
握りしめる。
「知ってる?暗殺者にされる予備軍の子供達は、人殺しの方法を教わってあらかたの知識と力をつけると、テストをされるの。それまで一緒に学んできた仲間達に刃を向けて、殺せ、でなければ殺されろ、ってテスト」
「……」
「仲間を殺して生き残った者だけが次に進める。…皆、仲間に刃を向けるのを怖がってたけど、結局は生きるのに必死になった。泣きながら殺し合ったわ」
乾いた笑い。
そうやって私も生き残ったのだと、言わなくても相手に伝わる。
「実際、いい考えよね。強い者だけが生き残って、殺しを躊躇う弱い者はいなくなる。仲間殺しをして狂うような弱い精神の者もいなくなる」
「……」
「私の髪の色、ホントはこの色じゃないの。でも、染めた。
血まみれの自分を見つめるために。血の色を忘れないために」
そう言って、髪を一束指ですく。
深紅の髪。それを見つめる瞳は冷たい光を帯びている。
髪を紅に染めてから、何度血の色に染まり直されただろう。
数えきれない血を浴びた髪は、流れるように長く。私は何度もこの髪を見て、自分のした事を思い返した。