第6章 過去
人に語るのを許さなかった過去。許せなかった偽り。
がゆっくりと、口を開く。
「ヒュウイ様は、…私の…主なの」
視線はテーブルに落としたまま。
合わせる資格がないと思っているのか、合わせたくないだけなのか。十中八九後者だろうなとバージルは思った。
何も言わず、じっと耳を傾ける。
「私は4年前までヒュウイ様のもとで護衛をしてたのよ。ヒュウイ様の家系は裏の世界では有名で、狙われる事が多くて……男の子供はヒュウイ様一人だったから、私が護らないといけなかった」
でないと家の跡取りがいなくなってしまう。ひいては一族の血が絶えてしまう。
護衛が女である事には理由があった。武力以外に使い道があるからだ。
偉そうにしていたヒュウイがそれほど大きな家の息子だという事にバージルは驚いていた。
しかしふと気付く。
「そんな家柄の護衛を任されるほど、お前は強いのか。確か初めて会った時は、雑魚共に…」
「いいのっ!あの時はホント疲れてたの!!」
嫌な思い出をほじくりかえしてきたバージルに、思わずつっかかる。あれは本当に油断していたとしか言えない。
この私が、油断。苦笑して椅子に座り直した。
「…黙ってて悪かったけど…私、小さい頃から暗殺部隊で育てられたんだ」