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【DMC】BLUE

第5章 招かれざる客



「もう一度聞こう。貴様は何者だ」

同じ質問を何度もするのは性に合わない。これで男が答えなければ、問答無用で押し返すつもりだった。
男は、隙無く睨むバージルにもう一度目を向けると、にやりと笑った。

「主だ。そいつの」

ぷつん、と。何かが事切れたように力が抜ける。
逃げていた真実は、常に目の前にあった。逃げていたつもりが、まるで追っているような心境で。
主。主従関係。しがらみ。苦しみ。
はがくりと膝をついた。

バージルは無言で彼女を支える。

主?
だったらこのの表情は何だ。

何かに怯えるような顔。恐怖の念。
主と従者の関係であるなら、従者が主に対して畏敬や畏怖を感じるのは妥当とも言える。
しかし、からはただ恐怖しか見られない。
これが主に会った時の顔か?


時計の秒針が、1周し、2周し、3周し。
いつまでも動かない。
それに痺れを切らせた男は、わざとらしくため息をつくと大股でに近付いた。
乱暴にその細い腕を取る。

「行くぞ」

「……っ」

は顔をしかめた。痛いのか、辛いのか、恐いのか、拒否の証なのか。
腕を引っ張られ覚束ないながらも立ち上がると、ようやくか細い声を出す。

「あ……の」

「何だ」

ぶっきらぼうな男の声。
完全に苛立っているその声色にびくつきながらもは続けた。

「ひとば… 一晩、待って……」

「ああ?」

男がぎろりと振り返った。片目でありながらも鋭い眼光がを睨みつける。

「バージルに説明とか…今までのお礼とか…したい…」

その言葉に、男の片眉が上がる。

「いつからそんなに口が軽くなった。俺に指図できる立場だと思ってんのか?」

ゆるゆると責めながら嘲笑うかのような返答に、は肩をすくめた。

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