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【DMC】BLUE

第5章 招かれざる客



――――ガシャン!!

その言葉に耐えられなくなったかのように、の手から食器が滑り落ちた。
器に盛られた料理が散る。破片と共に混ざり合う。
もう食べられないだろう。バージルがそれを視線でちらりと見た。

の呆然とした、絶望的な、信じられないというような目。
バージルは眉をひそめる。

知り合いだろうか。
いや、それにしては雰囲気がおかしい。が素直に喜んでいない。
そして彼女を探しに来るような知人がいるという事すら、耳にしなかった。

───それよりも、この男は一体…

佇まいから滲ませる余裕と、姿を見ただけで感じる威圧感。
バージルよりは幾分歳上だろう。顔立ちはハッとさせられる程整っている。一度笑顔でも見せられようものなら女の4、5人は集まるだろう。
服越しにでも無駄のない身体つきがわかる。グレーの髪に、紫のメッシュと紫の瞳をしていて、そして。
左目は髪で隠され、全く見えなかった。

無言で不敵な笑みを浮かべながらバージルには目もくれずを眺める様は、人の上に立つ者、人に命令するような雰囲気を醸し出している。


男は、呆然と立ち尽くして震えているを満足そうに見ると、途端眉をひそめて言った。

「ったく…やっと見つけたぜ。手間かけさせやがって。来い」

自分から近寄りはせず、来いという男。
は震えたまま動かない。

動こうとしているのに身体が動かないのか、それとも初めから動く気がないのか。
どちらにしろその沈黙は男を苛立たせ、舌打ちをした。

「来いって言ってるだろうが」

「貴様」

あまりにも無理強いな物言いに、バージルは口を開く。

「何者だ」

ここはバージルの家で、男はいわば不法侵入者。
短く問うと、男はこちらを初めて見、面倒そうに一瞥し、言った。

「あんた、こいつの世話してくれた奴か?こいつは俺のだ。貰って行く」

ビリッと空気が震える。
普段であればバージル自身人間を嫌い生きているのに、をまるで物扱いするこの言い方は妙に勘に障った。
が男の命に少しでも抵抗しているのであれば。バージルはに近寄り、庇うように前に立った。

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