第4章 熱
「好きだと言われたのも腹が立つと言われたのも初めてだ。俺は悪魔だからな。嫌われるか恐れられるか利用されるかしかなかった」
「…寂しいね」
「寂しいなどと思った事は一度もない。これが俺の生きる道だ。力こそ全てで、弱いものは淘汰される」
「………」
寂しい。何て寂しい。
寂しくないとバージルは言ったが、その事自体がには寂しかった。
きっと本当に、物心つくくらいから嫌われ恐れられ利用されてきたのだ。
だからこうも隙がなくて、人をいつも疑って人間を嫌って。
それが当たり前になるほどに。
「人間の女には興味がない。だから逆に、興味があるという状況がわからない。だが、俺を恐れず、こうも喰らい付いて、俺にここまでさせる人間の女は初めてなのは確かだな」
「…そっか」
「悪い気はしない」
「そっか」
バージルがちらりとを見ると、一瞬だけ考え込むような表情が目に入った。しかしバージルと目が合うとすぐに笑む。
それを見て、自分にもあふれる満足感。
口走った事は間違いではない。
すると不意に。
思い出したように。
「………でも…」
が口を開く。
重たく。思い詰めたように。
「私は、人を―――」
そこで途切れる言葉。
「…何だ」