第4章 熱
バージルが聞いても、何も答えがない。
ただ視線は遠くを見つめていて。心はここにないようで。
「何でもない。……ねえ、寝てもいい?」
「………あぁ」
の複雑そうな表情が気になったが、バージルは何も聞かなかった。
言わないのならば立ち入る権利は自分にはない。
話す気持ちがあるのならいずれ話してくれるだろう。話してくれないのなら、それまでの話。
の背を撫で、体温を感じる。
大分落ち着いてきたようだった。それに安心し、ほっとする。
俺も、好きなのだろうか―――。
でなければ、さっきからバージルに襲いかかってきている衝動はどう説明をつければ良いのだろうか。
やたら騒ぎ立てる心臓の説明は。
は目を閉じてこちらに身を預けてくる。
純粋なまでの無警戒。闘う者にはあり得ない信頼。
こうまでするほど彼女が弱っているのか、それとも相手が自分だからなのか。
胸にかかるの熱い吐息が、抑えを揺らしてくる。理性にひびを入れる。
バージルは目を閉じた。心臓がうるさくて仕方がない。
経験のない欲望と願望と気持ちに戸惑いを隠せず、それはやがて苛立ちに。
なぜ自分がこれくらいの事で。いや、これほどのものなのか。
いずれにせよ、今はを休ませるのが先決だ。それ以上も以下もあってはならない。
ただでさえひどい傷を更にひどくされたのだから、安静は絶対だった。
そして翌日。
二人に嵐が巻き起こる。