第4章 熱
「全身にひどく汗をかいている。タオルで拭いて着替えさせるが、いいな?」
断ってはいるが問答無用の口調。熱でふらふらな彼女に自分の世話が出来るとは思えなかった。
それは自身もわかっているようで、少し逡巡した後に、俯きがちに頷く。
「……ん」
「心配するな、下着までは替えん。出来る限り見ないようにする」
一言付け加えてから布団を剥ぐ。
汗で濡れた服は息苦しそうに肌に張り付いていた。それを手早く脱がし、はあっという間に下着姿になった。
濡れた肌に空気が触れて冷え、一気に寒くなったのか、ぷるっと震える。
バージルは服を椅子に置くとタオル一枚を手に持ち、首から順に拭こうと押し当てた。
しかし自分自身が熱を出した経験がなく、そのままタオルを肌に滑らせてしまう。
熱で敏感になった肌にその刺激は強く、は顔をしかめ呻いた。
「ちょ…痛い…」
「痛いのか?」
「肌が敏感になってるのよ、……優しくして」
「……」
困惑。
決して力を入れてこすっているわけではないのだが、滑らせるせるだけで痛いらしい。
バージルは少し考えると、地道にタオルを押し当てて吸い取る作戦に出た。
一度拭いてから様子を伺うようにを見ると、大丈夫、と言うように微笑んできた。
それを確認してから、首から胸の谷間、腹、足へと順に拭き取っていく。
―――細い体だ。
細い上、タオル越しでもわかるほど柔らかい体。手当をした時にも感じた、魅入るような感覚。
なめらかな肌のあちこちに自分が巻いた包帯があり、傷が化膿しなければいいが、と心配になる。
正面が終わると焼き物のようにひっくり返し、背中も拭く。
しなやかな曲線を描く体。手当に集中するよう意識したが、張りのある臀部やくびれた腰、呼吸をするうなじに視線が吸い込まれる。
そんな自分に戸惑いながら、タオルを返し返し汗を拭き終えた。