第4章 熱
「バージルの手…冷たくて気持ちいい…」
不意にほっとしたような声がしたと思うと、額に当てたバージルの手にの手が添えられた。
「………」
バージルは眉を寄せたままを見つめる。
事態は思ったよりも深刻らしい。
バージルの手に添えられた手は冷たかった。額はこんなに熱いのに。
どうすればいい。
熱で汗が出ているなら、体を冷やさないよう拭かなければならない。それには勿論、服を脱がせ着替えさせるという行為も含まれる。
服に手をかけることを、彼女はどう思うだろうか。
―――馬鹿馬鹿しい。嫌がられるからといってどうなる。
重要なのは、一刻も早く彼女を完治させるということ。その目的の前に、感情は必要ないはずだ。
一瞬揺れた思いを、バージルは胸の奥へ追い遣った。
もう片方の手を、添えられたの手に当ててみる。
苦しそうに熱い息を吐きながらも、気持ちよさそうにほっとしたように頬をゆるませる。
バージルはそれを見て決意した。
彼女が気を失って倒れたのを見た時、守ろうと決めた。決めたはずだ。
今更何をためらう必要がある。
額に当てていた手をするりと外すと、バージルは部屋を出た。バスルームから清潔な白いタオルを2枚持ち出し、自室から自分の肌着を持ってくる。
また汗をかく可能性を考慮するなら綿素材が良いだろうし、いくら綿素材がいいといえど襟のついたシャツでは寝にくいだろう。
再びの居る部屋に戻ると肌着を椅子の背もたれにかけ、不思議そうに見上げてくる彼女に声をかけた。