第3章 目覚め
バージルは息をつくと、怪我の手当てを始めた。
消毒液を取り、ガーゼに染み込ませて。そっと、まるで薄いガラスをつかむようにに触れ、消毒をする。
温かい指先。
細長くすらりとしたそれは、洗練されたような雰囲気を受ける。
触れてくる指先から、怖がらせないように、これ以上傷ませないようにしているのがわかった。その手が自分に触れている事に嬉しくなり、恥ずかしくなり。
はバージルの顔を見られず、さっきから視線がうろうろしっぱなしだ。
ああ、心臓がうるさい。少し黙って欲しい。
バージルに聞こえていそうなほどに、身体が脈打っているのがわかる。
目の前にいるバージルに吸い込まれるようだ。見れば見るほど整った顔立ちをして、人ならざるものに思えてくる。
───何で?何で緊張してんの私?ていうかこの沈黙は何!
今のには、沈黙ですらいたたまれなかった。
するするとただ布の音が響いて、着々と手当ては進んでいく。
手慣れた手つき。何度かやった事があるのだろう。
バージルは何も話さない。手当てに集中している。
何か話した方がいいのだろうか。沈黙が、彼と自分の間に溝を刻んでいるような気がする。
話すって何を?手当の邪魔になるかもしれないのに。
いつも私は、どうやってバージルと話をしてた?何を話していた?どこを見ていた?
どうやってバージルに……。
わからない。
わからない!
焦りと焦燥。突然どうしたらいいのかわからなくなり、は一人唇を噛みしめる。
気持ちを落ち着かせようとするがバージルを見て逆に焦った。
見ていると、視線を感じたのか彼が顔を上げ、視線がぶつかり。慌てて反らす。
不自然。
私は今まで、バージルにどんな顔をしていただろうか。どうやってバージルに触れていた?
混乱が津波のように押し寄せ、襲いかかる。
私は、どうしたら───
その時。