第3章 目覚め
再びドアが開き、バージルが入ってくる。
手には新しいタオル。サイドテーブルに置いてある救急箱を開けて、手当てに必要な物を取り出していく。
は起き上がって布団の上に座り、準備をするバージルをじっと見た。
救急箱を開ける整った横顔。
決して崩れない表情。
救急箱の中をかきわけて包帯を取る、すらりと長い指。
無駄のない動き。
均整のとれた身体では、何をしていても様になっている。スタイルいい人はうらやましいとは思った。
───綺麗な目…水の中みたい。
澄んだ瞳に吸い込まれるようだ。見つめて離れない。
すい、と。流れるように、アイスブルーの瞳がこちらを見た。
「何だ」
「えっ?う ううん。何でもない」
見ていたのが気付かれていたのか。恥ずかしくなり、視線をあらぬ方向へ向ける。
バージルはそれに僅かに首を傾げると、綿と消毒薬を取っての前に膝をついた。
「腕を出せ」
「え、…自分でやるよ?」
「貴様は自分で背中の手当てができるのか」
「………お願いします」
少し眉をひそめながら言われ、大人しく腕を出す。細い手がのばされ、ぞくりと寒気がした。
不意に出会った時の彼の姿が蘇り、殺されたりしないだろうかと根拠のない不安がよぎる。