第3章 目覚め
───ん…あったかい……
何だか身体のあちこちが暖かくて、は幸せそうに微笑んだ。
ずっと冷めた気持ちと冷めた世界しか知らなかった自分が、唯一憧れたものだ。
渇望もした。
切望もした。
願望だったもの。
人の、人間の暖かさが身を包んでいた。
気持ちいい。
自然と頬が緩む。
私はやっと、手に入れられたのだろうか。
大切にしてくれる人を。優しく存在を認めてくれる人を。
利益無しで一緒にいてくれる人を。
すると。
「何にやけてる」
声。何だかとても腹の立つ声が。
───え…
「………。 っ!!?」
その低い声に、はがばっと飛び起きた。
起きた瞬間目に入ったのは、覗きこんでくるバージルの顔。真上から見つめられてしばし固まる。
身体を起こそうとして気付いたのは、自分があろう事かバージルの上で寝ていた事。
硬くしなやかに筋肉のついた彼の太股に、は手をついていた。
「ぎゃっ!えあっ ちょっ…」
はっとして慌てて飛び退き、ベッドの上に正座する。
どうしてバージルの上で寝ていたのかわけがわからなくて、必死に記憶を探って。
遡り、遡り、ようやく思いつく。
───あ…もしかしてあのまま寝ちゃった…?
しかも起きた時バージルの上だった事を考えると、彼はが寝てからずっと動いていないらしい。
「……っ…」
あまりの失態に、はぼすんと前のめりに倒れこんだ。
いくら気が緩んだとは言っても、まさか。まさか他人の膝の上で寝るなんて。
───あり得ない…こんな事今まで一度もなかったのに…!
それほど自分は、バージルを信用していたのだろうか。は信じられない気持ちだった。
あんな事の後だから油断しただけ?
それとも私の感覚が鈍っているの?
まあどちらにしろ、恥ずかしい事に変わりはない。
相手がバージルだからよかったものの、他の輩の前で同じような事になれば何をされるかわからない。
───…ちょい待ち。何で「バージルだからよかった」なのよ。
自問自答。眉をひそめる。