第3章 目覚め
今までこんな事はなかったし、あり得なかった。考えもしなかった。
関わる事すら無意味で、自分に利益がなければ極力避けていた。
くだらない人間はくだらない理由で動きくだらない人生を送りくだらない事に振り回される。それ以上もそれ以下もないはず。
なのに、今のこの状態。自分で自分が信じられない。
だから何だ。どこが悪い。
この開き直ったような気持ちも、変だ。
しかし。
せめてこの傷がふさがるまでは自分がついていようと、気持ちで考えるよりも先に感じる。
まるで人が変わったかのような思考に思わず笑いが漏れた。
以前と比べてあまりに変わりすぎている。正反対だ。
一瞬本当に自分の考えなのかと疑ってしまうほど。
成長したのか?
それとも退化したのか。
まるで初めてのこの考えが生まれたのは、が来たから?
あの時───あんな場所でめちゃくちゃに襲われていたを助けた時から、全てが狂ったのかもしれない。
それとも、正されたのか。
「どちらでもいい事だ…」
本当に、どちらでもいい。
どちらか片方に答えが定まったところで、何かが変わり代わるとも思えない。
どちらでもいい。
どうでもいい。
小さく呟いた声は、静寂の中で響き。
こだまするように空気に跳ね、己に言い聞かせるように返ってきた。