第3章 目覚め
バージルは、膝の上に倒れこんでいるの頭をそっと撫でた。
今は落ち着いて、すうすうと整った寝息を立てている。その横顔からは、先程までの痛々しい程の恐怖は全くと言っていい程感じられなくて。
一瞬、あれは夢だったのではないかと。
しかしそれはただの錯覚。
静かに泣くだけ泣いたは、倒れるようにして眠った。彼女は何も言わなかったし、自分も何も言わなかった。
の手はずっとバージルの服をつかんでいる。まるで拠り所にすがりつくように、拠り所を手探りで探し当てるように。
簡単には離してくれそうもない。
いいだろう。掴みたいなら、すがりたいなら、いくらでも思う通りにするといい。
それで気持ちが少しでも落ち着くのなら。
が味わったものは不安や恐怖という単語一つでは表しきれないものだっただろうから。
柔らかい髪をさらりと撫で、その横顔を見つめて。
あまりにも無防備に眠る。守りたいと素直に思った。
これは同情か?
ただの一時の感情なのか?
一人の人間の女が傷ついていたのを助けた。
家に招き入れた。
介抱して治療して、完治するまでここに居ればいいとらしくない事を言い。
脆弱で貧弱な人間を、ましてや人間の女を嫌っていた自分が。
全ての行動がまるで奇妙。異様。違和感。不自然。