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【DMC】BLUE

第2章 侵入者


男は、人間とは思えないような物凄い力でぐいっと後ろに引かれた。
同時に後ろからバサッと布が舞い、に投げかけられたのは青いコート。

「覚悟はできているのだろうな。地獄を…見せてやる」

「!!!」

人を殺す事を全くいとわない無情な声。
射殺されるのではと思ってしまうような鋭い視線。
その怒りは青く、強く。
魂が凍りつき、男は震えた。

呆然としていると問答無用で連れ出され、男は危機を感じ我に返ったように暴れ出す。
しかしバージルはびくともせず男をひきずり。

最後に男は、助けを求めるようにに手を伸ばし、何か言いかけた。
同時にそれを断ち切るように扉が閉まり、それっきり音は聞こえず。


再び部屋に入って来たのは、一人だけだった。

「バ…ジ………」

まるで何の無かったように、出て行った時と同じ冷たい表情でドアを閉めるバージル。
は彼を見つめ、遠くを見るようにつぶやき。
バージルはそれに顔を歪めると、に近寄った。

「大丈夫だ。あいつはもういない」

そう言いながら、の束縛を外しにかかる。
しかし結び目が固く、やがてもどかしくなったようで閻魔刀で切った。

そして嫌でも目に入る、広げられた傷口。
自分が治療した所は一つ残らず荒らされていて、見るも無惨な状態。
逃れようと必死になった証の手首の擦り傷からは、血がにじんで皮膚が赤くなっていた。


バージルはずっと顔をしかめたままで。
あまりに悲惨な状況に、ただただ苦い気持ちが広がって。
なぜ自分がこの場にいなかった。窓の鍵をしっかり閉めなかった。普段は戸締まりなど気にしなくても問題ないが、今日は彼女がいる。
鍵を閉めていればこんな事にはならなかったかもしれないのに。

ロープを外すと、頭がはっきりしてきたらしいはバージルを睨むように見詰めながらすぐさま後退った。
その顔には恐怖。誰も近寄らせまいとする拒絶。

「……すまなかった」

「…………」

は何も言わない。
わずかな涙に頬が濡れたまま、ただ怯えたような視線でバージルを見つめる。
いつもの強気が全く感じられない儚さ。

今すぐにでも壊れてしまいそうで。
触れようと、掴もうと、ゆっくり手をのばす。

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