第2章 侵入者
しかし、そんなの表情を見て男は更に嬉しそうに顔を歪める。
「お前、いい顔するな。その恐怖に染まった顔たまんねぇぜ」
―――こいっつ…!頭狂ってんじゃないの!?
おそらく何度もこうした行為を繰り返しているのだろう。うっとりとする男を、殺意に満ちた気持ちで見遣る。
いかれているとしか思えない。
どうかしている。
怒りと悔しさと嫌悪と恐怖が、を支配していた。
「―――…」
男は不意にの首に顔を埋めると、荒々しく口付けた。
それを機にあふれるように事が始まり、男の手があちこちをまさぐる。
「―――!!」
は暴れて抵抗するが、男に首を押さえつけられて苦しい上に縛られている為ままならない。
女の体は厄介だ。どうしたって、男に力で敵わないのだから。足で急所を蹴り上げようにも、男の方も最低限の護身は身につけているようで、腹が立つほど隙がない。
―――っ…
悔しい。
縛られていなければこんな男なんか一瞬で叩きのめしてやるのに、それができないのが悔しい。
悔しくてたまらない。
触らないで。
男の手が、手当てされている怪我の所に触れた。
包帯の巻かれた足を見て、肌と綿の境目を撫でながら瞬く。
つかの間不思議そうにしていたが、にぃっと笑うと包帯に手をかけ取り去った。