第2章 侵入者
驚いてびくりと動きを止めたの口を人影が素早く覆う。
勢いでは倒れ、走った痛みに顔をしかめた。
「─── !!」
バージルじゃない!!
あまりの唐突さに呆然と愕然とするを手慣れた手付きで縛りあげるのは、見た事もない男だった。
に急速に焦りが生じる。
口に布を詰め込まれ、手も足もロープできつく縛られ。その顔には女が一人いた事に喜ぶ下卑た笑み。
───泥棒…!
よりによって、こんな時に。
の怪我はまだまだ完治には遠く、バージルが出掛けている時に。
抵抗しようとすれば傷だらけの身体に痛みが走り、顔を歪める間に容赦なく動きを封じられ。
男はの自由を完全に奪うとにやりと笑った。
「騒ぐんじゃねえぞ。金品強奪しようと思ったが…いい女が一人いるじゃねえか。後でたっぷり可愛がってやるよ」
そう言うと男は、が逃げないよう見張りながら、その部屋の中だけをあさりはじめた。
本棚をめちゃめちゃにし、ひっくり返し、引き出しはところ構わず開け放して中のものを掻き出し、金目のものを探す。
ここで騒いでもどうしようもないと判断したは、声をあげずに男を睨みつけた。無駄な体力は使わない方がいい。
後ろ手に縛られたロープをどうにかほどけないかと動かすが、きつく固く縛られていてほどけなかった。
苦い気持ちが広がる。全く油断しきっていた自分が恨めしい。
それでもやらないよりはましだと、何とかはずそうとするが。
そのうちに手首は擦りきれ、血がにじみ始める。