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【DMC】BLUE

第14章 喪失



「。また俺のもとに来ねぇか? もちろん仕事は殺しじゃない。腐った家を建て直さなきゃなんねぇんだ」

表情は変わらないながらも、バージルに緊張が走る。
恐れていた事だった。そして恐怖していた事。

はヒュウイのもとへ行くかもしれない。
しかしそれは、前よりも重く感じる事はなかった。
は生きているのだ。生きていれば、会える。
どんな結果になろうと、の意思に託すつもりだった。


「ヒュウイ様…」

は、ヒュウイを見つめて。
両目を失ったヒュウイを見つめて。
視線を落として。

自分の為に瞳を失った当主。彼に尽くした日々は、たくさんのものに縛られていたけどそれなりに楽しかったはず。
なら、私は。彼の目になるべきなのだろうか。
目になって、支えて。
今度こそ。


沈黙が下りた。
長い長い沈黙。静まった水面。波紋すら許さない。




やがて。
ひとつ、窓から風が吹いての頬を撫でて。

「申し訳ありません」

の声が。

「お側にいたいのはやまやまですが、辞退させてください」

信じられない。バージルはを見つめる。
ヒュウイのもとへ行くのだと思っていたのに。
そう思っていたのはバージルだけではないらしく、ヒュウイも身体を揺らした。

「…理由を言え」

「バージルが家を出た時を、覚えていますか? 私は揺れていた。あの気持ちを知りたいんです」

「………」

「だから、バージル」

視線がぶつかる。あの髪を切った出来事以来初めて。
真っ直ぐだった髪は、少しだけ伸びて少しだけ不揃いになっていた。

「また、あの家に住ませて」

「………いいのか?」

「いいのかってこっちが聞きたい」

「離しはせんぞ」

「でもちょっとは離して」

「出て行くなどと言わないだろうな?」

「言わないよ。こんな半端な気持ちで悪いけど、でも…」

人を好きになる事を忘れた私。
取り戻せそうなスタートライン。

「バージルと、一緒にいたい」

「……っ」

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