第14章 喪失
数日後。
の目の移植手術は成功し、は意識を取り戻して話せるまでになった。
右目は翡翠。左目は紫。
拒絶反応もなく、順調に回復しているという。
ある日、見舞いに行ったバージルはに目の移植の事を告げた。
するとは、目を見張って。
バージルから顔を逸らせて。
「……そう。ヒュウイ様が…」
「あぁ」
「馬鹿なんじゃないの」
「俺もそう思う」
「馬鹿よ。こんな事で…片目くれるなんて…っ」
「そいつはひどい言い様だな」
二人はハッと入口を振り返った。
そこには、両目を包帯で覆うヒュウイと、部下であろう男が一人。
「俺にしちゃ最大級の詫びと償いをしたつもりだぜ」
「それにしたって…ヒュウイ様は、もともと片目が…」
「あぁ。見えねぇな」
さらっと言う。
ヒュウイは、幼い頃から左目の視力が弱かった。
そこで更に、見えるはずの右目をなくしたのだ。何も見えなくなっているはずで。
「私なんかに、そんな事…っ」
「馬鹿言うな。俺の意思じゃねぇよ」
これはユアの意思だ。
彼女を好いても報われない片割れ。
役に立てるなら。
役に立てるなら、と。あの時。
身体は勝手に動き口は意思と違う事をまくしたて。
身体を無理矢理乗っ取られたのは初めてだった。
最初は腹が立ったが、今ではこれでよかったとも思える。
「お前の家はどうなる」
バージルは尋ねる。
新聞で知ったのだ。ルース家当主が亡くなったと。
誰が殺したのか、それとも自殺したのか、わかってはいないけれど。
バージルは鋭くヒュウイを睨む。
「別になくなりゃしねぇよ。俺が継いだ。この日の為に、ちまちま部下を増やしててな」
結構支持率あるんだぜ、と皮肉めいた笑い。
それから、不意にに向き直った。