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【DMC】BLUE

第14章 喪失




バージルは刀を投げ捨てた。に駆け寄る。

畜生、と思わず声が漏れ。
守れなかった。間に合わなかった。
潰されそうだ。この世に。全てに。

力の抜けたの体は重たくて。
まだ息をしている事だけが救いで。
それも消えてなくなってしまいそう。身体の震えを懸命に抑える。

唇を噛み締めた。俺は何をしている。
こんな事をしている場合じゃないはずだ。
かぼそい息。出血多量で死んでいないのが全く不思議な状態。両手足は折れ動かせる所はどこもない。

バージルはぎゅっと目を閉じた。鼻の奥が痛かった。何かが溢れそうなのをこらえ、目を開け。
骨折箇所の補強。出血箇所の手当て。
背中から翼。顔は人間のそれではなくなって。
小さな体を大切に大切に抱えて。

自分一人では対処しきれない。
左目を潰された彼女を、一刻も早く病院に。

悪魔は少女を連れていく。


―――――――――――――――


「殺せるのか? この私を。父親を」

そう言いながらも動こうとしないレイ。
ユアの目付きは、いつの間にか変わっていた。

「ふざけた事抜かしてんじゃねぇよ。嬉しくてゾクゾクするぜ」

「おや。ヒュウイに戻ってしまったのか」

「あんたがあんまりムカつくんでね」

皮肉を込めて言うと、レイは笑った。

「殺すがいいさ。私一人殺した所で、何も変わらん」

「変えてやる。俺が」

「随分自信があるのだな」

「喜ばしいことにあんたとは出来が違う」

がきり。撃鉄の下ろされる音。
わざわざたった一発だけ弾を込めた銃。これだけであんたは事足りる。
それでも、レイは動かない。

さすがに抵抗するかと思ったが、そうでもないようだな。ヒュウイは思う。
暴れるならともかく命請いでもしたらすぐ殺ろうと思っていたが、やはりそんな男でもないようだ。
プライドだけは高い。

兄を殺し。
暗殺者として隠れた所でを育て。
逃げ出した途端殺そうとし。

その罪は、重く。

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