第14章 喪失
昔。ルース家に待望の跡継ぎが生まれた。
待ちに待った跡継ぎだ。一同それはそれは喜んだが、赤ん坊を見た途端笑顔は凍り付いた。
二人。
生まれたのは、双子だった。
やがて双子の兄はユア、弟はヒュウイと名付けられた。
しかし跡継ぎは二人もいらない。二人いても争い、無駄に時間が過ぎるだけだ。
悩んで。悩んで悩んで悩んで悩んで。
しかし実際は、そう見せかけていただけで。
レイは、生まれたのが双子だと知るとすぐに言った。
「二つあるなら片方は捨てろ」
そうして、ヒュウイが生まれてしばらく経った頃。
わざわざ物心がついた頃に。
手術によってユアは消され。
人格はヒュウイの中に詰め込まれ。
跡を継ぐためにいらない弱さは全てユアに。強さはヒュウイに。
手術は成功だった。
「それで? ここに何をしに来た」
レイは問う。まるで何も感じていないかのように。
ヒュウイは…ユアは、無感動に答えた。
「わかっているはずだ。貴方を殺しに来たと」
睨むと、レイは不意に笑い出す。至極おかしそうに、ややこらえながら。
肩を震わせる。
「あぁ…そうだ、お前は好きだったのだな。あいつを」
ぴくりと眉根が寄せられた。
あいつ。の事だ。
苦い気持ちが広がる。全く、悪趣味な父親だ。
人のことを何とも思っていない。
「だからどうした」
「こちらの台詞だ。好きだから何だというのだ。あいつは、ヒュウイを好いている」
重い言葉。
知っている。ずっと近くで見ていたのだから。
呟いて、目を閉じる。
嘆いて、銃を手に取る。
「終わりだ」
余興は終わりだ。