第13章 ふたつ
約束された未来。確定的な地位。
その代償と犠牲。
命の流出。
レイ・ルースは、当時一番腕の立った暗殺者であったを、ヒュウイの付き人に当てたのだった。
「雇ったと言ってたが、まさか父親がなあ。あいつが逃げたからどうせ要らなくなったんだろう。上手い事口動かして指名手配しやがって。
残念だったな。はまだ生きてる」
おそらく手配したのはこの父親本人。
莫大な報酬はルース財閥だからこそ。
さっきから父親の表情は、笑顔のまま崩れない。
そして、抑揚のない声で言った。
「まだ生きているのか。おかしいな。損なく殺す為に腕の立つ者を500人ほど送り込んだはずだが」
「あぁ、そんなもん」
ヒュウイは至極おかしそうに笑う。
「俺が全員殺した」
が家を逃げ出してからも、家の中は不自然なくらいに変わりなかった。
その裏で父親は、ひっそりとを殺しに行かせ。
ヒュウイはそれに気付いて家を出た。
もともとヒュウイは気まぐれな跡継ぎ。腹が立つほど腕もいい。殺されるなら笑って返り討ちをするような人間。
普段から家を空ける事が多かったため、気に止める人はともかく違和感を覚える人は一人としていなかった。
そうして、を殺せと命じられた輩500人をに気付かれる事なく気取られる事なく片付け。
あの日と出会うまでの4年のブランクは、彼女を守る為。そのためだけのものだった。
が自分の知らない所で殺される。
を自分の父親が殺そうとした。
それだけで、俺がこいつを殺す理由になる。
俺が。
俺のために。
こいつを。
殺してやる。