第13章 ふたつ
実の父親。
ルース財閥の長。
一般人には手も届かない地位。そんな親のもとに生まれた自分は幸か不幸か。
ヒュウイは笑みを消した。笑ってやる優しさなどとうに失せていた。
諸悪の根源。を巻き込んだ醜悪な執着。
俺をも巻き込む貪欲な欲望。
汚いものを見るように最大限の嫌悪を込めて睨みつける。
レイは微笑んだ。
最愛の息子を慈しみながら殺した時のように。
「ユアは元気か?」
不意の問い。
ヒュウイは眉間の皺を深くする。それだけで答えない。
そんな彼に父親は再度問うた。
「ユアは元気か? もう一人のお前は」
「…………」
ユア。
ヒュウイの表情が切り替わる。
スイッチを押したように綺麗に擦り変わる。
「ヒュウイが元気なら元気なのだろう。いちいち問うものでもあるまい」
視線も変わる。口調も変わる。立ち方も変わる。仕草も変わる。
ユア。ヒュウイ。
「この身体はヒュウイのもの。俺は裏の存在でしかないのだ」
二重人格。