第13章 ふたつ
信じられなかった。
赤い髪は更に赤く染まっていて固まりこびりつき。
引っ張られていくらか千切れた。
皮膚のもとの色がわからないくらい血濡れた身体。
手足は不自然にだらりと下がり。
彼女の目は虚ろ。
きっと何も見えていない。
縫い付けられたような足。気付けばこちらまで飛び散っている血。
びくりと身を引く。
真っ白な脳内。
指先が痺れて熱くなり、瞬きを忘れたように光景を凝視。
手に触れる刀。
シャン、という澄んだ音の後に鞘を投げ出す音。
しかし。
しかし、バージルが走り出して瞬時に間合いを詰めた瞬間見えたもの。
の左目にあてがわれるナイフ。
「!!!」
刀を振った。怒号が響いた。
悪魔の唸り声。閃雷のような光。
幻の刀が無数現れ、いつもの美しさ繊細さ計画さの欠片もないくらい滅茶苦茶にに男を刺した。
男は悲鳴を上げる暇も無く即死。後悔と怒りと激しい無念。
絶対零度の刀で体中を串刺しにする。
の左目。
深々と刺さった、ナイフが。
翡翠を抉ったナイフが。
それだけが、残った。