第7章 哀傷…
僕は大学へ向かう準備をして、再び階段を降りた。
父様の支度がまだ済んでいないのか、母様は苛立ちを隠せない様子で、階段の下を行ったり来たりを繰り返している。
「行ってきます」
「ええ、行ってらっしゃい」
「あ、母様達のお帰りは? パーティーだと、遅くなるよね?」
その方が僕にとっては好都合なんだけど…
「そうね…、そうなるでしょうね…」
「分かったよ。母様、外出するの久しぶりでしょう?
ゆっくりしてきて?」
僕は母様に笑顔を向け、軽く手を振ると、玄関を飛び出した。
そして門まで一気に駆け抜けると、すぐ脇にある雑木林に身を潜めた。
すると程なくして、父様と母様を乗せた自動車が、僕の目の前を轟音を響かせて走り去って行った。
やっと行った…
二人を乗せた自動車が角を曲がるのを確認して、僕は木の影から身を乗り出すと、屋敷の正門を通り越して、裏口へと向かった。
裏口の鍵は、以前照から預かっていたから…
広い庭を抜け、勝手口から屋敷の中へと入る。
人気のなくなった屋敷の中は、どこも閑散としていて、僕は周りを窺うことなく、二階へと続く階段を登った。
おそらく、留守を預かる僕達のために用意してくれたんだろう、新鮮な果実を絞った飲み物と、サンドウィッチを手にして…