• テキストサイズ

愛玩人形【気象系BL】

第7章 哀傷…


それ以上照を問い詰めることは、僕には出来なかった。

照の毅然とした姿が、僕にそれをさせなかったんだ。

「分かった。もう行って? 済まなかったね、手荒な真似をして…。明日は休暇なんだろ? ゆっくりしてくるといいよ…」

壁に叩きつけた拳が熱を持ち始めるのを感じて、僕はそっと照に背を向けると、机に向かい突っ伏した。

「坊ちゃん、あの…」

「いいからもう行って…」

「はい…。では私はこれで…」

僕の背後で、ぱたりと扉が閉まるのをきっかけに、僕は伏せていた顔を上げ、握り締めた拳に歯を立てた。

赤く、血が滲む程強く…

照はやはり知っていたんだ。

それはあの一瞬見せた戸惑いの態度からも明らかだ。

でも父様や母様にこの上ない忠義を立てている照のことだ。
きっと何度尋ねたって結果は同じことだろう。

僕はどうしたら…
この胸の中に広がる黒い靄(もや)を、どうしたら消し去ることが出来るのだろう…

僕はそっと瞼を閉じ、その裏にあの夜庭から見たあの光景を思い浮かべた。

あれは紛れもなく智子だった。
疑う余地などない。

あの日の智子は、確かに様子がおかしかった。

今まで見せたことないような、まるで売春婦のような化粧と衣装で装い、妖艶なまでの雰囲気を身に纏っていた。

かと思えば無邪気に振る舞い、昔と変わらない姿を見せる。

智子…お前は一体どれだけ僕の心を惑わせるつもりだ…
/ 263ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp