第2章 初恋…
「な、何がおかしいんですか…」
それでもなんとか虚勢を張ろうとする僕に、潤は唇の端を少しだけ上げて、フンのばかりに鼻を鳴らした。
「好きなんだろ?」
「えっ……?」
予想もしていなかった言葉に、答えに詰まる僕の肩を、潤の少し大きな手が掴んだ。
「残念だったな。智子は俺が貰うぜ? いいよな?」
潤が何を言ってるのか、意味が分からない。
僕は頭の中が真っ白になるのを感じた。
「一応さ、智子のお兄様には許可を取らないとね? 後々面倒なことになるのは御免だからな」
「ちょ、ちょっと待って…。智子は物じゃないんだ。貰うとか…そんな…」
それに許可って…
怒りにも似た感情が、沸沸と湧き上がって来て…
僕は勢い良く立ち上がると、学生鞄を引っ掴んで、屋敷まで続く石敷を、わざと足音を鳴らして駆けた。
嫌な男…
あんな奴に智子を取られて溜まるもんか!
僕は帰宅の挨拶すらすることなく、玄関扉を開け放つと、いつものように階段下で僕の帰りを待っていた智子の手を掴んだ。
「兄さま…? どうなさったの?」
智子の問にこたえることなく、僕の智子の手を引いて階段を昇った。
「兄さまったら、そんなに強く握ったら、智子痛いわ…」
「あっ…」
見ると、智子の手首は、少しだけ赤くなっていて…
「ごめんな、智子…。痛かったろ?」
僕は赤くなった智子の手首を、そっと摩った。