第2章 初恋…
潤は大学の講義が終えると、ほぼ毎日のようにやって来ては、智子に勉強を教えた。
智子も、初めこそ潤に対して余所余所しい態度を取っていたが、何度か会ううちに、潤とも打ち解け、それまでが嘘のように愛らしい笑顔を潤に向けるようになった。
僕はそれが、正直面白くなかった。
僕と智子との時間を奪われただけでなく、智子の笑顔まで潤に奪われてしまったような気がして…
僕の智子なのに…
父様が認めて連れて来た男だとはいえ、僕は潤が憎らしくて仕方なかった。
僕だけの智子なのに…
いつしか僕の中に、潤に対する“敵意”の様なものが生まれていた。
潤もそれに気付かない筈もなく…
ある日、学校から帰った僕を、潤が玄関先で呼び止めた。
別に話すことなんて、僕にはなかったけれど、“智子のことで”と言われて、仕方なく僕は潤と庭にある東屋に向かい、そこで話を聞くことにした。
「智子のことで話って、何ですか?」
僕は隣合って座る潤との間に、わざとらしく学生鞄を寝かして置いた。
これで潤との距離が少しだけ広くなった。
でも潤はそんな僕の気持ちなんてお見通しで…
クスクスと肩を揺らすと、次の瞬間、とても冷酷な視線を僕に向けた。
瞬間、僕はとてつもない敗北感を、潤に対して感じた。