第6章 宿望…
でもそんな生活は長くは続かなかった。
僕がカフェーに通っては、女を買っているのが二宮君に知られてしまったんだ。
翌々考えてみれば当然だ…。
僕が通っていたカフェーは二宮君の実家で、僕が買っていた女は、そこで給仕として働いていたのだから…。
それだけじゃない。
僕は生活費として父様から送られてきた金を、全て女を買うために注ぎ込んでしまい…
結局、困った挙句、二宮君を頼ってしまった。
二宮君はそんな僕の素行に呆れはしたものの、諫めることはしなかった。
きっと彼は気付いていたんだ。
僕の心の中に巣食う闇の存在に…
そんな折り、僕の元へ一通の電報が届いた。
差し出し人は父様。
内容は、早々に部屋を引き払って、屋敷へ戻れと言う物だった。
父様のことだ…
人を使って僕のことを見張らせていたのだろう…
一瞬そう思った。
…が、実際はそうではなかった。
智子と潤の婚約を正式に交わすため。
長子である僕が、いくら後学のためとは言え、場末の町で一人暮らしていると世間に知られては、体裁が保てないと考えてのことだった。
結局僕はあの家から…
父様から逃れることなんて出来ないんだ。
僕は父様の手の中で踊らされるだけの、操り人形ではないのに…