第6章 宿望…
僕はいつしか、大学に通う傍ら、二宮君の実家でもあるカフェーに通い詰めるようになっていた。
勿論、勉学に勤しむことも忘れていなかった。
でもそれ以上に、身体の奥に溜まった智子への尽きぬ想いを吐き出したくて、僕は二宮君が留守の時間を見計らっては店を訪れては、給仕の女性を店の外へと連れ出し、安宿へと誘った。
明らかに智子よりもふくよかな乳房に顔を埋め、慣れた仕草で男を誘いこむ身体を、欲望のままに貪り、最後には必ず智子の顔を思い浮かべ、そして智子の名を叫びながら果てた。
男の身体なんて便利な物だ…
愛してもいない相手にでも、ちゃんと機能はするんだから…
でも結局最後に残るのは、そこはかとない虚無感と、後悔…
そして智子に対する懺悔…、それだけだった。
それ以外は、何も残らなかった。
どれだけ女を抱いたところで、智子の変わりなんてどこにもいないんだ。
僕の空っぽになった心が満たされることなんて、ありはしないんだ。
寧ろ、満たされない感情は、サラサラと音を立てて零れ落ちて行くだけ…
そう、まるで砂時計のように、サラサラと…
ああ…、智子…
君に会いたい…
この腕に抱いて、思いの丈を君に…