第5章 妬心…
「そうですね、将来的には…」
意識は庭の二人に集中させたまま、そう答えた僕に、潤の父親はその皺だらけの顔を一瞬綻ばせて、
「そうですか、それは頼もしいことですな」
そう言うと、どことなく寂しげに瞼を伏せた。
「あの…、潤先生も継がれるのでしょう? お父様の病院を…」
確か以前話をした時には、そんなようなことを言っていた気がするけど…
そうじゃないのか…?
「ああ、翔にはまだ話していなかったか? 潤君には智子との結婚を機に、この家に入って貰うことにしたんだよ」
「えっ…、そんな話、僕は一度も…」
潤がこの家に一緒に住むなんて…
そんなこと…
「私も色々考えたんだが、やはり智子をこの家から出すのは気がかりでな…。松本さんには申し訳ないが、潤君にはこの家で暮らして貰うことに決めたんだよ」
父様の言わんとすることは分かる。
僕だって、智子を見も知らない土地にやるのは…智子と離れて暮らすのは嫌だ。
智子を…、純真で無垢な…、穢れを知らない智子を、僕の手の届くところに置いておきたい。
僕だけの智子を…
でも…、でも…、智子と潤の仲睦まじい姿を、この目の前でまざまざと見せつけられるのは…
潤の手が、唇が、智子に触れるなんて…
いや、それは潤でなくても…、仮に他の誰かであっても同じこと。
僕にはそんなの耐えられない…