第13章 特別編「偏愛…」
「ねぇ、兄さま? 智子ね、智翔が産まれてからずっと、智翔に嫉妬してたのよ?」
智子が…、智翔に…?
どうして…
「だって兄様ったら、いつも智翔のことばかりで、ちっとも智子のこと構ってくれなかったんですもの…」
そんなことは…
そりゃ智翔のことは大切な娘だし、大事に想ってはいたけど、それ以上に僕は君を…
「ええ、そうね。智子だって智翔のことは大事よ? でも智子は、ずっと智子だけの兄さまでいて欲しかった。だから智子…、智翔が兄さまをお慕いしていることを知りながら、智翔を潤さんの元へ行かせたの…」
何…だって…?
それじゃあ智子は智翔の幸せを願っていたわけじゃ…
「勿論願ってたわ…。だって智翔は智子の大切な娘だもの。でもね、兄さま…。いくら大切な娘だったとしても、兄さまだけは渡したくなかったの…」
ああ…、智子…、君は何ということを…
「ごめんなさい、兄さま…。智子…、酷いお母さんだわ…。智翔に酷いことをしてしまって…。きっと兄さまに嫌われてしまったわね…」
僕も同じだよ、智子…。
僕には智子を責める資格も、これ程までに深い愛を与えて貰う資格も、何もありはしないんだ。
寧ろ僕の方が、智子の冒した罪よりも、数倍…いや、数百倍重い。
すまない、智子…。
君に罪を冒させたのは、他でもないこの僕だ。
全ての罪は僕にあるんだ。
智子…