• テキストサイズ

愛玩人形【気象系BL】

第13章 特別編「偏愛…」


「愛している…」と…

たとえ禁忌を冒しても、それでも僕は智翔を愛していると…
娘などではなく、ただ一人の”女性”として、僕は智翔を愛していると…

でも僕の声は智翔に届くことはなかった。

いや、厳密に言えば、僕の言葉は“声”になることはなかった、なのかもしれない。

脇腹に強い衝撃を感じたかと思うと、次第に熱を帯び始め、次第にその熱はまるで灼熱と化し、やがて身を裂くような痛みへと変わった。

「智…翔…、ど…して…」

息が詰まって、呼吸さえままならなかった。

僕は崩れるようにその場に両膝を着いた。

そして、その時になって漸く、自分の手の中にあった筈のペーパーナイフが無いことに気付いた。

まさか一瞬動揺した隙を見て…?

なんと言うことだ…

僕は、時が経つ毎に激しさを増す痛みを堪えながら、智翔を振り返った。

「智…翔…、それを…寄越すんだ…」

「嫌よ…」

「智翔…!」

智翔は、血に濡れたペーパーナイフを両手に握り、朦朧とする意識の中、徐々に霞み行く視界でも分かるくらいに、身体を震わせていた。

「お父さんを殺して私も死ぬの…」

「馬鹿なことを言う…な…、良いから…それをこちらに…」

息が出来ない…
苦しい…

身体が燃えるように熱い…

それでも僕は、残る力全てを振り絞って、智翔に向かって手を伸ばし続けた。
/ 263ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp