第13章 特別編「偏愛…」
僕は、逸らすことなく僕を見つめる智翔の視線から逃れるように背を向けると、唯一残った手に拳を握り、奥歯をきつく噛みしめた。
智翔の目を見るのが怖かった。
心の奥底まで見透かされてしまいそうで…
それなのに、僕の気持ちを知ってか知らないでか、智翔は僕の背中にぴたりと身体を寄せた。
瞬間、僕の胸が…心臓が、口から飛び出てしまうのではないかと思うくらい跳ね上がった。
いけない、と…
ぼくには触れてくれるな、と…
心の中で何度も訴えた。
何度も何度も、強く願った。
なのに…
腰に回された細い腕を振り払うことは、とうとう出来なかった。
「お父さん…、私はお父さんが好き…。娘だからとかではなく、お父さんが好き」
言うな、言ってくれるな…
その先の言葉を聞いてしまったら僕は…
「愛しているの…。私、お父さんを愛しているの…」
僕が一番聞きたかった言葉…
そして一番聞きたくなかっ言葉に、僕の頬を一筋の涙が伝った。
ああ…、また僕は禁忌を冒してしまうのだろうか…
血を分けた妹を愛し、そしてまた血の繋がった娘を愛してしまった僕は、もう逃れることの出来ない罪に苛まれて生きるしか道はないのだろうか…
僕は、腰に回された智翔の手に、自分の手を重ねた。
「智翔…、僕は…」と…