第13章 特別編「偏愛…」
「まずいな…、ここにも来ていないとなると、智翔は一体どこに…」
腕を組んだままの姿勢を変えることなく、二宮が舌打ちをする。
そして僕を振り返ると、
「行先に心当たりは…?」
険しい表情を僕に向けた。
「心当たりと言われても…」
幼い頃ならともかく、今の智翔が行きそうな場所など、思い当たるわけが無い。
それでも、
「まさか潤の所…とか…」
唯一思いついた名前を口にするが、二宮は即座にそれを否定した。
「それは無い」と…
既に潤には確認済みだと…
「じゃあ一体どこに…」
智翔の身を案ずれば、こんな所で佇立している場合ではないことは分かってる。
かと言って闇雲に動き回っていては、それこそ智翔の発見も遅れかねない。
そうなれば智翔は…
「あっ…、もしかして…」
「どうした、心当たりでも?」
「いや…、分からない。でも、智翔が行く所といったら、あそこしかない」
僕は二宮に車の手配を頼むと、適当に着替えを済ませ、庭先に出て二宮の到着を待った。
気は酷く急いていた。
ただ不思議なことに不安はなかった。
もし僕の予想が正しければ、智翔はあの場所にいる筈だ。
智翔がまだ幼い頃、夏になれば毎年のように三人で行っていた場所に…