第13章 特別編「偏愛…」
ただひたすらに智翔の幸せを願った智子と、智子の思いを汲み、願いを受け入れた潤…
二人が…、そして智翔がとんな思いでいたのか…
そんなことも知らずに僕は…
「僕はなんてことを…、二宮、智翔にもしものことがあったら僕は…」
僕の全てを賭けて愛した智を亡くし、その上智翔まで亡くしたら、僕はもう生きていられない。
「なあ二宮…、僕はとうしたら…」
二宮の手に縋り、堪えきれなくなった涙が床にぽつりと落ちた、その時…
診察室の戸が開き、処置着を所々血で汚した医師が、疲労に満ちた顔で僕達に向かって頭を下げた。
「さ、智翔は…、娘は…」
「大丈夫ですよ、お父さん」
「本当に…? 本当に智翔は…」
無事…なのか…?
「ええ、ただ…」
「ただ…、なんですか?」
聞き返した二宮に、医師が険しい表情で首を横に振る。
その時点でなんとなくの予想は出来た。
だから自分なりの覚悟は出来ていたつもりだった。
それでも、
「残念ですがお腹の子は…」
医師の口から現実を聞かされた瞬間、僕の視界が真っ暗な闇に包まれた。
恐らくはまだ人の形すら成さないであろう小さな小さな命を、僕は自身の感情の昂りと、そして劣情のために殺したんだ。
僕のこの手で…