第13章 特別編「偏愛…」
「なあ櫻井? お前が死んだって、お前の犯した罪は消えやしねぇんだよ。永遠に智翔の中に深い傷となって残り続けるんだよ」
板張りの床に崩れた僕の肩に、二宮の微かに震える手が添えられた。
「お前は、この先もずっと罪を背負って生きて行かなきゃなんねぇんだよ」
罪を背負い生きて行く…、そのことがどれ程辛いことか、考えるまでもなく想像がつく。
望みもしない子をその身に宿し、それでもどうすることも出来ないまま、誰にも知られることなく産み、乳すら吸わせず捨てた母様が、智子の存在にどれだけ苦しみ、許しを請うては毎夜涙で枕を濡らしてきたか、僕はすぐ傍で見ていた。
幼い僕から見ても、罪の証でもある智子を傍に置き育てることは、茨の道そのものであったに違いない。
その道を僕にも歩けと…?
「無理だ…、僕には罪を背負って生き続けるなんて…」
とても出来っこない…
「それでも、だ。どんなに辛かろうが、苦しかろうが、それでもお前は生きなきゃならんのだよ、櫻井」
智子さんのためにも…
そう呟いた二宮の手に、僅かではあるが力が入ったのを、僕は開襟シャツの薄い布越しに感じた。
「智子が…どうしたって…?」
聞き返し、見上げた視線の先で、二宮の小さく息を吐き出した。