第13章 特別編「偏愛…」
自分の犯した罪から逃れたい一心で、僕は二宮の手を握った。
二宮ならば、この呪縛とも思える因縁から、僕を解放してくれるだろうと…、心の奥で考えていたのかもしれない。
ところが二宮は僕の手を振り払うと、
「何が”僕を殺してくれ”だ。ふざけたことを言うんじゃないよ」
普段は滅多に出すことのない怒りの感情を、僕に向かってぶつけた。
「お前が死んでどうなる? 何一つ変わりゃしないだろうが…」
「で、でも、僕はもう…」
血の繋がった妹に恋慕しただけでも重罪なのに、智子との間に授かった娘にまで邪な感情を抱き、挙句智翔を…
こんな僕が生きていて良い筈がない。
「頼む二宮、僕を…僕を殺してくれ!」
「嫌だね」
どうして…
「大体、お前が死んだら智翔はどうなる? 頼る者もなく、一人ぼっちになってしまうんだぞ? 分かるか?」
「それは…。で、でもっ…!」
僕だって智翔を一人遺して逝きたくはない。
益々美しい娘に成長するであろう智翔を、この先もずっと…僕が年老いて命尽きるその時まで見守り続けたい。
親ならば当然の願いだ。
でも僕がこの世に存在する限り、僕は永遠に智翔を傷付けることになる。
かつて父様がそうであったように僕も智翔を…
だった…