第13章 特別編「偏愛…」
「た、助けてくれ…、二宮…」
僕は咄嗟に智翔を布団に包み、二宮に救いを求めた。
「どうした、そんな切羽詰まったような声を出して…」
微かな笑いを含んだ声が襖の向こうから聞こえて、間を隔てていた襖がゆっくりと開かれる。
「済まんなこんな夜分に…」
襖が全て開かれた瞬間、
「これは一体…、何があった!」
二宮の顔が凍り付き、まるで転げるように智翔の元へと駆け寄った。
「僕が…、僕が悪いんだ…。僕が智翔をこんな目に…」
助けが来たことに安堵したのか、僕の目から涙が幾粒も零れ落ちる。
「二宮、頼む、助けてくれ…」
「わ、分かった、詳しい話は後だ。とりあえず松本先生の所へ…」
布団に包んだ智翔を抱き上げ、二宮が立ち上がろうとする。
けど僕は立ち上がろうとした二宮の足を掴み、
「駄目だ…、あいつの所は…、潤の所だけは駄目だ…」
引き止めた。
「だ、だが、松本先生以外にこの辺りに医者なんか…。それに急がないと智翔が…」
これ以上智翔をこのままにしておくことは、智翔の身が危うくなることくらい、医学の知識を持たない僕にだって分かる。
でも…、それでも、潤の元へ智翔を連れて行くことだけは、どうしても許せなかった。
「ここへ…。智子の主治医だった先生だから、智翔のこともきっと…」
僕は智翔に託すつもりだった手紙を二宮の手に握らせた。