第13章 特別編「偏愛…」
泣いて…いるんだろうか、潤の肩が小刻みに震え…
見兼ねた二宮が、僕の背後で小さく息を吐き出し、僕の肩を叩いた。
「智翔な、妊娠してるんだ」
「え…? 今…何て…?」
俄に信じられない告白に二宮を振り返ると、二宮は何とも言えない…、まるで苦虫を噛み潰したような顔をしていて…
「嘘…だろ? 智翔が妊娠だなんて…、そんなこと…」
何かの冗談だろうと…、そうでなければ勘違いであったと、そう信じたかった。
そんな筈はない、と…
でもそんな僕の願いは、静かに近付いて来た足音によって脆くも打ち砕かれた。
「本当よ、お父さん。私、妊娠したの。お腹に赤ちゃんがいるの」
瞬間、目の前が真っ暗になって、足元がぐらりと揺れたような気がした。
「妊娠て…、お前はまた十七になったばかりじゃないか…、それなのに妊娠なんて…」
冷静にならなければ、と…
自分に言い聞かせた。
何度も、何度も…
なのに僕の胸に押し寄せる波は、余計に泡立つばかりで…
「相手は…、相手は一体…」
僕は智翔の肩を掴んだ。
「痛いわ…」
智翔が訴えても尚、僕は智翔の肩を骨が軋む程に強く掴み、乱暴に揺さぶった。
そして、
「潤おじ様よ…」
智翔の口から吐き出された一言に、僕はその場に膝から崩れ落ちた。