第13章 特別編「偏愛…」
僕のせいだ。
僕がもしこんな身体でなかったら…
僕がもっと早く智子の身体の異変に気付いていれば…
そうすれば、もしかしたら智翔はこんな選択をせずに済んだのかもしれない。
そう思ったら、僕は僕自身を責めずにはいられなかった。
僕が愛する娘の人生を台無しにしてしまったんだ、と…
でも智翔が女学校を辞めた理由は、それだけじゃなかった。
「済まない…!」
それまで終始無言を貫いていた潤が、突然その場に跪き、地面に額を擦り付けるようにして頭を垂れた。
「お、おい、何も君が謝ることじゃあ…」
僕は潤に駆け寄ると、頭を上げるよう、潤の肩を揺すった。
僕には、潤がそうまでして僕に謝罪する理由が見つからなかったから…
「頭を上げてくれないか?」
「いや、俺のせいなんだ。俺が…」
一体全体何がどうなっているんだ…
僕は救いを求めるように二宮を振り返った。
でも二宮は決して僕と視線を合わせまいとしてか、顔を背けてしまう。
「教えてくれ、どうして君が…?」
困惑する僕の視線の先で、潤の手が砂利を掴み、握った拳を地面に叩き付けた。
余程力が入っているのか、その指先には薄らと赤い物が滲んでいて…
「お、おい、何をしている。止めないか」
僕は咄嗟に潤の手を掴んだ。