第13章 特別編「偏愛…」
「どうして引き止めてくれなかった?」
傍にいた二宮なら、遠く離れて暮らす僕なんかより、余程容易に出来たことだろうに…
「引き止めたさ。引き止めたが、智翔の意思は固くてな…。俺もそれ以上智翔を止めることは出来なかったんだよ」
智翔は僕に似て…いや、僕以上に頑固なところがあるから、二宮が智翔を説得しきれなかったのは分かる。
それでも…
「智翔な、お父さんはお母さんがいないと生きていけない、とても弱い人なんだ、って…」
「智翔が…そんなことを…?」
「だから、自分が傍にいないといけないんだ、って…」
馬鹿な…
僕は一人でだってちゃんと生きて行ける。
現に、智子を亡くした今だって…
「なあ二宮、今からでも間に合わないだろうか?」
「何を…?」
「退学を取り消して貰うことは出来ないだろうか?」
無理なことは、僕自身学校勤めをしているから、重々承知している。
それでも親の承諾も無しにこんなこと…
あって良い筈がない。
「無理だろうね。仮に許されたとして、智翔の気持ちはどうなる?」
智翔の気持ちたと?
「そんな物は関係ない。智翔には…」
愛する娘には、僕や智子のように、親に縛られて生きるだけの人生を送って欲しくはない。
それだけが、僕と智子の願いでもあったのに…