第13章 特別編「偏愛…」
生きているのが辛かった。
智子のいない世界を、たった一人で生きて行かなくてはならないのが、辛くて…、苦しかった。
僕は勤めていた村の学校に長期の休暇を申し出た。
無邪気な子供達の顔を見れば、少しは気が紛れるだろうとも言われたが、僕には到底そんな風には思えなかった。
子供達の純真で無垢な様子を目の当たりにすれば、否が応でも智子の姿を思い出さすにはいられなかったから…
僕は外に出ることもせず、一日の大半を智子と過ごした家の中で過ごした。
そんな僕を案じてか、片腕が無くては何かと不便だろうからと、時折り潤の母親がやって来ては、食事や身の回りの世話をしてくれたが、それすらも僕にとっては迷惑でしかなかった。
他人が足を踏み入れることで、智子の生きた痕跡が薄れて行くのが耐えられなかったんだ。
誰にも、僕と智子の時間を邪魔されたくなかった。
そんな折、僕の元に一通の電報が届いた。
差出人は、学生時代の学友、二宮だ。
僕は突然の電報に少々戸惑いはしたものの、配達員に礼を告げると、恐る恐るそこにならんだ文字を一文字ずつ、声に出して読み上げた。
そこには、
『シュウマツ チカ キキョウス』
と確かにそう書かれていて…
それは、最愛の人を亡くし、生きることへの意味すら見いだせなくなっていた僕にとって、最も心躍る知らせだった。