第12章 追葬…
「ところで…」
住職が境内を駆け回る智翔に目を向けた。
「見たところ智子さんと良く似ておいでのようですが…」
そう言った住職の目が、どこか訝しんでいるように見えて、
「あの子は…」
僕は一瞬答えに詰まった。
禁忌の果てに出来た子だとは、とても言う気にはなれなかった。
と同時に、神仏を前に嘘偽りを述べる気にもなれず…
「僕の娘です。智子との間に出来た、僕の…」
躊躇いながらも、僕は住職に打ち明けた。
住職は一瞬顔を険しくしたが、それでも構うものか…
僕が嘘をつけば、それは智翔の存在まで否定することになる。
それだけはどうしても出来なかった。
出事がどうであれ、智翔は僕の大切な娘には違いないのだから…
「そう…ですか、お二人の…」
明らかに嫌悪した様子の住職に、これ以上ここに長居することは得策ではないと判断した僕は、智子の手を取ると、
「帰りの汽車の時間もありますので、僕達はそろそろ…」
住職に頭を下げ席を立った。
智子の手を引き本堂を出ると、それまで境内を駆け回っていた智翔が駆け寄って来て、智子のもう一方の手を引いた。
「お母さん、二宮のおじ様ったらとっても面白いのよ?」
「まあ、そうなの?」
「だってね、二宮のおじ様ったらね…ふふふ」
息と声を弾ませる智翔の首筋が、汗できらりと光る。
大人のそれとは違う、若さ故の瑞々しさに、僕は不覚にもどきりと胸を高鳴らせてしまった。