第12章 追葬…
週末、いつもより早く起きた僕達は、早々と支度を済ませ家を出た。
駅までは潤の好意に甘えることにした。
どうやら潤は僕達だけで出かけることが心配で心配で仕方がないようだった。
潤は僕達が無事汽車に乗るまで見送ると、汽車が走り出す直前になって思い出したように、潤の母親が用意してくれた弁当を智翔に手渡した。
「ちゃんとおばあ様にご挨拶するんだよ? いいね?」
「ええ、もちろんよ。潤おじ様の分も智翔がちゃんとご挨拶しておくわね?」
「ああ、頼むよ」
潤は右手を軽く上げると、苦笑を浮かべた。
汽笛が鳴り、汽車がゆっくりと走り出すと、智翔は窓から身を乗り出し、見送る潤に手を振り続けた。
「智翔、ちゃんと座っていないと危ないわよ?」
智子が心配そうに智翔のワンピースの裾を引っ張る。
その光景が、幼い頃の僕と智子の姿に重なって見えて、僕は思わず笑いを噛み殺した。
「もう、お母さんたら心配性なのね?」
漸く腰を落ち着けた智翔が智子に向かって頬を膨らませて見せた。
智子が朝結わえたばかりの髪は、風に煽られてすっかり乱れている。
「お母さんは智翔のことが大切なんだよ。だからどうしても心配してしまうんだよ。そうだろ、智子?」
智翔の髪を結わえた布紐を直しながら、智子が小さく頷く。
「智翔のことが? そうなの、お母さん」
「そうよ? だって智翔は智子の宝物ですもの」
智子とは違う、真っ直ぐに伸びた髪を指で梳き、愛おしそうに智翔をその腕に包んだ。
許されることなら母様も、きっとこんな風に智子を抱き締めたかったに違いない。
そう思うと、僕の胸が少しだけ痛んだ。