第11章 信愛…
それからと言うもの、僕達の生活は一変した。
生活全てが智翔を中心に回り始めた。
昼夜を問わず泣く智翔に、智子は勿論僕も右往左往するばかりで…
勿論潤も、潤の両親も年若い僕達を案じてか、何かと手助けをしてくれたけれど、それでも溜まって行く疲労が消えることはなかった。
でもそんな生活も、不思議と苦ではなかった。
寧ろ小さな智翔を見ているのは、この上のない幸せでもあった。
智子もそれは同じで、
「智翔ったら、本当に泣き虫さんなのね?」
なんて言いながら、智翔を細い腕に抱き上げ、頬を擦り寄せた。
「赤ん坊は泣くのが仕事だからね…」
僕は縁側に座った智子の隣に腰を下ろすと、無心で智子の乳を吸う智翔の頬を指の腹で撫でた。
「柔らかいな、智翔のほっぺたは…」
「もう、兄さまったら最近は智翔のことばかりなのね? 智子寂しいわ…」
「そ、そんなことは…」
途端に頬を膨らませ、ふんとばかりに拗ねて見せる智子が可愛くて、僕は智子の肩を抱き寄せると、尖らせた唇に自分のそれを重ねた。
「僕が愛してるのは、ずっと智子だけだから…」
智翔を愛していないわけじゃない。
でも智子と智翔では、愛情の形が違う。
「兄さ…ま…?」
ほんの少し触れただけの口付けにうっとりとした目を向ける智子に、僕は身体の中心がかっと熱くなるのを感じた。
「智子…」
僕は更に強く智子を抱き寄せると、今度は少々乱暴に唇を奪った。