第11章 信愛…
驚いた智子は咄嗟に手を引くと、おろおろとした様子で僕と智翔の顔を交互に見た。
「まあ、どうしましょう…。智翔は智子のことが嫌いなのかしら…」
今にも泣き出しそうな顔の智子が、僕を縋るように見上げる。
でも僕だってどうしたらいいのか…
「そ、そんなことは…。きっとお腹が空いているんだよ」
「お腹が…? じゃあおばさまにお願いして、ご飯を用意して貰わないと…」
とんでもないことを言い出す智子に、僕の両肩ががくりと落ちる。
「いいかい、智子? 智翔はまだ僕達と同じご飯を食べられないんだよ?」
そうだ…
僕だって何も知らないわけじゃない。
父親になると分かった時、少しだけ勉強をしたから…
「智翔みたいな赤ん坊は、お母さんのお乳を吸うんだよ?」
「お乳を…? まあ…」
目を丸くしながら、それでも智子はそっと智翔を抱き上げると、寝巻きの襟元を肌蹴させ、白い肌を露にした。
そして小さな乳房に智翔の口を寄せ、智翔に乳を吸わせた。
「ふふ、不思議ね…? 兄さまは智翔が智子に似ていると言ったけど、こうして智子のお乳を吸ってる智翔のお顔、兄さまにそっくりよ?」
「えっ…?」
僕は顔が熱くなるのを感じて、思わず智子と智翔から目を逸らした。
「あら、本当よ? 智翔はきっと美人になるわね。兄さまもそう思うでしょ?」
当たり前だ。
だって智翔は、僕と智子の子なのだから…